【第六話】 それからすぐ、私はアメリカへ渡りました。 潜在意識開発の訓練を受けるため、研究所に二週間ほど滞在しました。 その滞在中に、フミさんからメッセージが届きました。 実はフミさんには、数年前に婚約していた男性がいたのだといいます。 しかしその彼はバイク事故によって意識を失いました。 意識を失ったままの彼に、フミさんは毎日語りかけていました。 返事が返ってくることはありません。 表情が変わることも、手が動くこともないまま、同じ時間が、同じように繰り返されていきます。 それでも彼女は、通い続けました。 今日はどんな一日だったのか。 どんなことを思ったのか。 彼からの答えが返ってこないとわかっていながら、彼女は言葉にせずにはいられなかったのです。 ——これは、本当に意味があるのだろうか。 ふと、そんな思いがよぎる日もあったといいます。 それでも、彼女は眠り続ける彼の元へ通い続けました。 そうして積み重なった時間は、どこにも届いていないように見えたまま、ある日、彼は静かに息を引き取りました。
