こんばんは。 三谷帆です。 街を歩いているときや、カフェで隣の席から漏れ聞こえてくる声。 ふとした瞬間に耳に飛び込んできた言葉が、頭の中で「パチン」と音を立てて妙にはまることがあります。 まるで、どこからか飛んできたピースが、自分の心の片隅に用意されていたフレームにぴったり収まるような感覚。 私は密かにそれを「言葉のパズル」と呼んでいます。 先日のことです。 駅前の広場でバスを待っていたとき、 前を歩いていた親子連れの会話が耳に入ってきました。 幼い男の子が、空を見上げながらお母さんにこう言ったのです。 「おかあさん、きょうの雲、ちょっと『お腹いっぱい』だね」 見上げると、確かに真っ白でモコモコとした大きな道雲が、空いっぱいに広がっていました。 「重そう」でも「大きい」でもなく、「お腹いっぱい」。 たったその一言で、見慣れた秋の空が、なんだか満腹で満足そうに眠りにつこうとしている生き物のように見えてきて、思わず口元がほころんでしまいました。 子どもの発想はいつだって自由なパズルです。大人が決めつけがちな言葉の意味をひょいと飛び越えて、新しくてとびきり可愛いピースを投げかけてくれます。 また別の日の喫茶店では、おばあさま二人が楽しそうにお茶をされていました。 一人が「最近、物忘れが多くてねぇ」とため息をつくと、もう一人がすかさずこう返したのです。 「いいじゃないの。忘れた分だけ、また新しいワクワクを頭に入れられるんだから!」 なんて素敵な言い換えでしょう。 「忘れん坊」というネガティブになりがちな出来事が、一瞬で「未来の楽しみのためのスペース作り」というポジティブなピースに形を変えた瞬間でした。 私たちは毎日、たくさんの言葉に囲まれて生きています。 ニュースの堅苦しい言葉や、SNSの足早に過ぎ去る文字たち。 けれど、ふとした日常の隙間に転がっている「ちょっと不思議で、クスッと笑える言葉」を拾い上げてみると、いつもの風景がパッと明るく色づき始めます。 すれ違った誰かの言い間違い、小さな子の奇想天外なつぶやき、思いがけない表現。 それらはすべて、日常をちょっと楽しくしてくれる宝物のピースです。 もし今日、あなたの心が少しだけ硬くなっていたなら、周囲の音にそっと耳を澄ませてみてください。 どこかで誰かが放った一言が、あなたの心をふっとほぐす、素敵なパズルのピースになってくれるかもしれません。 今夜も、月の裏側でそんな小さなお喋りができますように。 三谷帆
