翔ばない鳩がいる。 それも何羽もいる。 車が来てるのに翔ばずに小走りで逃げている。 木陰では足をたたみコンクリートで身体を冷やしている。 雨上がりには、そのコンクリートに出来た水溜りで水浴びをし、渇いた喉を潤している。 なぜ翔ばないのだろうか? 夕方に寝ぐらに帰る時と、翌朝に同じ広場にやってくる時だけなのだろうか? ここに翼が欲しい人間がいるのに! 翼をください を歌ったり、あなたの空を飛びたい を歌ったり… 喉から手が出るほど翼が欲しい。 亡父が訳があって敷居をまたげなかった真の実家に飛んで行きたいし、亡母のお墓にも風に乗って飛んで行けたらと思う。 そして愛する人の元に 街を見下ろしながら、月の光の中を飛んで行きたい。 あの広場の鳩たちは、先祖返りなのかなぁ。 恐竜から派生した鳥類がまだ飛べるほどの翼を持たず走り回っていた頃に戻っていくのかなぁ。 なんともったいないことか… 人々が羨望の眼差しで見上げる空を、鳩よ、優雅に颯爽と飛んでゆけ! 人々は何故に空を見るのか? それは涙が流れ落ちないようにだ。 だから鳩よ鳥たちよ、遥かな人の心の中へ、見上げるその大空を悠々と翼を広げ羽ばたき、熱き想いを届けに飛んでゆけ!
