我武者羅に走りたくなる時があります。 目標に向け脇目も振らず、ただ走る。 風を頬に感じ、過ぎ去る風景を横目に。 息を切らし額の汗を手の甲で拭う、その充足と達成感。 愉しげな笑い声がして、ふと振り向くと少女たちが腰を屈め、道端の花に触れながら談笑していた。 指先で揺らしている花はたんぽぽだった。 立ち止まり、初めて気づくことがある。 路傍の花たち。 風の匂い。 空の高さ。 土の色。 そうか。急がなくていい。 「幸せ」はいつも、自ら逃げたりはしない。